VAZ、ねおが仮処分申立を取り下げたと発表 【弁護士が解説】

所属事務所「VAZ」とのトラブルが明らかにされた女性YouTuber「ねお」(登録者数102万人)が、VAZに対する仮処分申し立ての取り下げをしたとのプレスリリースがありました。(参考:VAZ

昨年ねおは、VAZからの報酬面の不当さなどを訴えるとともに退所を発表していたものの、VAZとの話し合いはいまだに合意には至っていないことも明らかにしています。

この件について、「SNS弁護士キタガワ」こと、弁護士の北川貴啓氏に取材しました。

仮処分申立とは

―プレスリリースによると、ねおはVAZに対して、今年5月に「労働契約上の地位不存在確認等の仮処分申立」をしていたとのことです。そもそも、これはどのような手続なのでしょうか。

ねおさんとVAZとの間で、既に退所が完了しているかどうかが争いになっていました。
当事者間で意見が食い違っている以上、裁判所に判断してもらうしかありません。
退所を希望しているねおさんとしては、 “労働契約上の地位が不存在であること”、すなわち既に退所が完了していることを裁判所に認めてもらうための裁判を起こす必要があります。

もっとも、裁判は判決が出るまでに1~2年かかってしまう場合もあり、その間ねおさんの地位(=キチンと退所できているかどうか)が不安定な状況が続いてしまいます。
そこで、退所を確定的に認めてもらう正式な裁判を起こす前段階として、スピーディーに“あくまで仮の決定で退所を裁判所に認めてもらう”ことができるのです。
これが、仮処分の申立てというものです。
この仮の決定は、だいたい2~3ヶ月で結論が出ることが多いです。

“既に退所が完了していること”の仮の決定が認められれば、ねおさんは(暫定的ですが)自由に活動できますし、活動による収入をVAZと分け合う必要がなくなります。
もちろん、あくまで仮の決定にすぎませんので、その後の正式な地位不存在確認訴訟で結論が変わってしまう可能性もあります。

ねおは昨年退所を報告していたが・・・

―なるほど、暫定的であってもスピーディーに結論を求めたいときに行うのが仮処分というものなんですね。ねおは、昨年10月の動画で正式退所を報告していましたが、それでも仮処分の申し立てを行う必要があったのでしょうか。

あくまで推測ですが、あの動画は、ねおさん側の意思をキチンと明示しておこうとしたのではないでしょうか。
ねおさんとしては、たしかにVAZとの話し合いは完全に終わっていないものの、自分としては退所したい意思があるし、契約解除の意思をVAZに通知した以上、問題なく退所が有効であることのアピールをしたかったのではないかなと思います。
とはいえ、ねおさんとVAZとの間で意見の食い違いがある以上、最終的には裁判(それに先立っての仮処分)をせざるを得なかったのではないかと考えます。

申立を取り下げた理由は?

―では、なぜ今回ねおは、仮処分の申立てを取り下げたのでしょうか。

考えられるパターンはいくつかあります。

ひとつは、水面下でねおさんとVAZとの間で話し合いの決着がついたので、ねおさんが裁判所に対して仮処分を求める必要性がなくなったのではないか、ということです。
ただ、話し合いの決着がついたのであれば、VAZとしてはこの事実を報告するでしょうし、ねおさんの「退所しました」という動画も削除されず、他方でVAZのホームページ上にねおさんが所属クリエーターとして表示されているままの状況からすれば、いまだに最終的な合意ができている可能性は高くないかもしれません。

もうひとつ考えられるのは、あくまで推測にすぎませんが、ねおさんの仮処分の主張がこのままでは認められにくい状況でとなってしまったので、仮処分は一旦諦めて、その後の正式裁判のほうで判決を勝ち獲っていく戦略に切り替えたのではないか、ということです。
仮処分が認められようが認められまいが、最終的には正式裁判の判決がすべてなので、そこに全力を注ぐようにしたのかもしれません。

もちろん、正式裁判での判決をもらう前に、両当事者の話合いで合意ができる場合もありますので、ねおさんもVAZも引き続き交渉をしていくことになると思います。

おそらく、今後も双方で話し合いが進められていくと思いますが、所属事務所との契約関係でトラブルになるYouTuberやクリエーターが後を絶ちません。問題が起きる前に必ず、その道に詳しい弁護士などに相談して、所属事務所と信頼関係を構築していってほしいと思います。

弁護士 北川貴啓

慶應義塾大学法学部卒、明治大学法科大学院卒、神奈川県弁護士会(川崎支部)所属

■メディア実績
日本テレビ「実は私こういう者でして…」、フジテレビ「バイキング」、テレビ朝日「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」、TBS「ゴゴスマ」ほか多数

YouTubeチャンネル「SNS弁護士キタガワ」
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