「ゆっくり茶番劇」の商標登録騒動 弁護士の見解は?

YouTuberの「柚葉」(登録者数22万人)が「ゆっくり茶番劇」の商標権を取得したと発表しました。この件がどのような影響を及ぼすの、「SNS弁護士キタガワ」こと、弁護士の北川貴啓氏に取材しました。

(関連記事「『ゆっくり茶番劇』がYouTuberに商標登録され大騒動に」)

商標権は「ネーミング」や「ロゴマーク」などを保護する権利

―そもそも「商標権」とはどのような権利なのでしょうか。

簡単に言うと、商品やサービスなどに付いている「ネーミング」や「ロゴマーク」などを保護する権利です。
個人や会社が一生懸命作った商品やサービスに付いている「ネーミング」や「ロゴマーク」を、他人に勝手に使われてしまうと、ブランドイメージが低下してしまう可能性もありますし、利用者もどれが本家の商品・サービスなのかわからなくなってしまいます。そこで、特許庁に「この『ネーミング』や『ロゴマーク』を独占的に利用させてほしい」と申請し、それが認められることによって、商標登録され、他人に無断で利用させないようにできることになります。

商標登録は早いモノ勝ち

―もともと「ゆっくり」は、「『東方Project』から派生した独特の表情で表現されるAA、イラスト」が起源と言われており、いわゆる“ゆっくりボイス”と組み合わせた「ゆっくり動画」は長年かけて動画サイト内で確立されたジャンルです。「ゆっくり茶番劇」そこから派生したジャンルのひとつであり、もともとの発案者・権利者ではない柚葉の申請が認められることなんてあるのでしょうか。

残念ながら、この商標登録は、早いモノ勝ちなんです。

もちろん審査があって、ありきたりな文言(「リンゴ」や「YouTuber」など)では基本的には認められません。
もっとも、完全な造語ではなくとも、①複数の単語を上手く組み合わせて、②特定の商品・サービスの範囲に限定して、③どんな種類(文字、図形、立体物、色彩など)の範囲で申請するかによって、商標登録がなされる場合があります。

今回は、①については「ゆっくり」「茶番劇」それぞれの文言自体はありきたりですが、その組み合わせはありきたりなモノとまではいい難いとして、特許庁が商標登録を認めてしまったのかもしれません(もしかしたら柚葉さんも、100%自信を持って申請をしたのでないのかもしれません)。

また、②に関しては“インターネット上の映像”が含まれており、③に関しては“文字商標”に限定されています。
ですので、今後は柚葉さん以外の者がYouTube動画で「ゆっくり茶番劇」の文言をタイトルなどで使用するのは商標権侵害になってしまうと思いますし、これを少しアレンジした文言(たとえば「ゆっくり茶番」など)であっても、商標権侵害になる可能性が高いです。
逆をいえば、この「ゆっくり茶番劇」という文言(または類似文言)を無断使用しない限りは、商標権侵害になりません。
YouTubeで“ゆっくりボイス”そのものは使用できると思いますし、東方Projectのゆるキャラを使用するのも(原作者が同意していれば)問題ないということになります。

異議申立が通るかは裁判所の判断

―そうなんですね、今回は商標登録が公開されてから2カ月が経過しており、異議の申立ての期限が過ぎてしまっているようですが、もはや争う手段はないのでしょうか。

商標登録が完了した後でも、それが公益に反する商標など、商標登録の要件を満たさないと考えられる場合は、誰でも異議申立をおこなうことができます。しかし、申立ができるのは、商標掲載公報発行日から2カ月以内で、今回の場合は既にその期限を過ぎてしまっています。

異議申立ての他には無効審判という制度があります。
この無効審判には特に期限が設けられていませんが、この無効審判をおこなうことができるのは利害関係人のみとなっています。
問題は、この利害関係人に誰が該当するかですね、東方Projectの生みの親であるZUNさんなどが、果たして二次的・三次的に派生した“ゆっくり動画”関連について、利害を有しているかどうなのか、即断はできないと思います。
これについては結局のところ、裁判所の判断になってくると考えています。

 

次ページ:投稿主が注意すべきポイントは?

1 2